映画でも音楽でも本でも何でもいいのですが、あの出会いが私を変えた的な作品って誰にも一つはあると思うのですが、私にとってはこの『アンダーグラウンド』がそれ。
仕事で映画関係のパンフレットを作成している会社にいたことがあるので、仕事中に映画について妄想することが許される恩恵にあずかって、まさに浴びるように映画を観ていました。テオ・アンゲロプロスの『ユリシーズの瞳』という映画も同じ頃に公開されていたはずなんだけど、内容についてはほとんど覚えていません。
一方、この『アンダーグラウンド』のことはよく覚えていて、シネマライズの様子とか、金縛りにあったように椅子から動けなくなったとか、上映後にとりあえず渋谷のWAVEにサントラ買いに走ったところ売り切れだったりとか。
世界中で起きている、私たちに知らされていないことを積極的に知るようにしようと漠然と思ったのもこの映画がきっかけです。
当時、映画監督を辞めると宣言したクストリッツァは私たちの前に戻ってきてくれて、今もたくさん映画を作ってくれてるけどやっぱりこの映画だけ違う。『マラドーナ』で過去の作品が挿入されているけど『アンダーグラウンド』だけないんですよね…。
バウスシアターの爆音映画祭で上映されるというので、前売り券まで買ってスタンバイ。自分の中ではあの全編にわたって狂言回し的に登場するブラス音楽を感じられればそれでよかったんですが…甘かった。音楽、爆撃音、そしてそれらに引っ張られるように溢れ出てくる生命力までがパワーアップしてきてこちら側にぐんぐん迫ってくる。降参です。あっという間の150分でした。
映画の奔放さという点では文句ないし、忘れられないシーンはたくさんありますが、クストリッツァの分身として映画の世界に送り込まれたイヴァンのラストシーンでのあの台詞が、一見儚いようでいて、いつまでも続くところにこの映画の凄さがあるんだと私は思います。
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