年末に佐山一郎さんの
『夢想するサッカー狂の書斎』という、フットボール本の書評集(本文のスカスカ感漂うレイアウトとは裏腹に、中身はめちゃくちゃハードでタフ)に紹介されて高い評価を得ていたのがこの本。人の評価をそのまま鵜呑みにしたくはないけれど、こんな引用が私の心を捉えてすぐさま読んでみたくなったのだ。
いつも自分が正しいと思っているから、サッカーは面白い。そして自分が正しいと思っていることの半分はいつも間違っている、だからサッカーはやめられない。
自分の体験から愛するチームのある幸せ的なことを書きたい心境はわかる。
だけど、そこにたどり着くまでのつばを吐きたくなるような体験とかは、なかなか語られることもないし、あまり目にすることはない。勝者についてしか語られない世界観が多分だめなんだろうな、私は(フットボールに限らず、映画や音楽、文学にも言えますが)。
『ボールピープル』は、名もなき人の傍らにあったフットボールが描かれている。その人にとってフットボールはなくてはならないものかどうかは、人それぞれなのでわからない。
ケン・ローチの『ケス』という映画で、主人公・キャスパーの体育の授業がフットボールだった時のシーンが私は大好きなのですが、そんな感じに近いかもしれない。
え、わからない? 本屋で手にとってみればいいんじゃないかな。
美しいたくさんの写真と、フットボールに媚びることはない距離感が感じられる文章。
ピッチ上の戦術についてとか、代表とJ1しか取り上げない雑誌とか、サポーターはこうあるべきみたいなのばかりしか目にしてなかった私としては目からぼろぼろ鱗が落ちまくっていくようでした。大事にしたい本です。
『ボールピープル』
近藤篤・著(文藝春秋)
PR